「ちりつも」効果で奨学金完済を早める:月々少額プラス返済の始め方
はじめに:奨学金返済の負担と「ちりつも」の効果
奨学金の返済が始まると、「この金額を毎月返し続けるのは大変だな」「いつになったら終わるのだろう」と、漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。特に、社会人になったばかりの頃は、収入もまだ安定せず、家計のやりくりに頭を悩ませることも多いかと思います。
確かに、奨学金は数十万円、場合によっては数百万円という大きな金額になるため、一度に大きく返済を進めるのは難しいと感じるかもしれません。しかし、何も特別なことをしなくても、毎月の返済額に少しだけプラスする「ちりつも」の考え方を取り入れることで、完済までの期間を短縮し、総返済額を減らすことが可能です。
この記事では、なぜ少額でもプラスして返済することが有効なのか、具体的にいくらプラスすればどれくらいの効果があるのか、そして、そのプラスするお金をどのように用意すれば良いのか、無理なく実践できる家計の見直し方や節約術と合わせてご紹介します。奨学金返済の不安を少しでも和らげ、完済に向けて一歩踏み出すためのお役に立てば幸いです。
なぜ少額でもプラス返済が有効なのか
奨学金は、借りた元金に加えて利息を支払う必要があります。毎月返済する金額は、この元金と利息に充てられます。一般的に、返済期間が長くなるほど、支払う利息の総額は増えていきます。
ここで重要になるのが、「繰り上げ返済」です。繰り上げ返済とは、通常の月々の返済額に加えて、まとまった金額または少額を上乗せして返済することです。繰り上げ返済で支払った金額は、全額が元金の返済に充てられます。元金が減ることで、その後の利息の計算対象となる金額が減り、結果として支払う利息の総額を軽減することができるのです。
「繰り上げ返済」と聞くと、ボーナスを全額充てたり、数十万円といったまとまったお金を用意したりする必要がある、大変なことだとイメージする方もいるかもしれません。しかし、奨学金の繰り上げ返済は、必ずしも大きな金額でなくても行うことが可能です。日本学生支援機構(JASSO)の奨学金の場合、インターネットや電話での申し込みにより、1回あたりいくらからでも(※)、都合の良い時に繰り上げ返済ができます。(※インターネット(スカラネット・パーソナル)での手続きの場合、1回あたり1,000円以上1円単位で可能です。)
つまり、毎月の返済額に、例えばあと5,000円、あるいは3,000円といった少額をプラスして返済することも、立派な「繰り上げ返済」になるのです。この少額のプラス返済を継続することで、支払う利息を減らし、完済時期を早める効果が期待できます。これが「ちりつも」効果です。
月々いくらプラスすれば効果がある?シミュレーションで見る「ちりつも」の効果
それでは、具体的に毎月少額をプラスして返済することで、どれくらいの効果があるのかを見てみましょう。ここでは、あくまで一般的な例として、有利子奨学金(第二種奨学金)を借りているケースを想定し、概算のシミュレーションを行います。
【シミュレーション例】
- 借入総額: 200万円
- 金利: 年利0.5%(固定金利と仮定)
- 返済期間: 15年(180回)
- 毎月の返済額(通常): 約11,500円
- 総返済額(通常): 約207万円
このケースで、毎月の返済額に少しずつ上乗せして返済を続けた場合の効果を見てみます。
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ケース1:毎月プラス3,000円返済した場合(月々の返済額 約14,500円)
- 完済までの期間が短縮され、支払う利息の総額も軽減される見込みです。
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ケース2:毎月プラス5,000円返済した場合(月々の返済額 約16,500円)
- さらに完済までの期間が短縮され、利息軽減効果も大きくなります。
例えば、借入金額や金利、返済期間によって具体的な効果は異なりますが、日本学生支援機構のウェブサイトにある「奨学金貸与・返還シミュレーション」などを利用して、ご自身の借入状況に合わせて試算してみることをおすすめします。少額でも継続することで、想像以上に完済が早まったり、支払う利息が減ったりすることが実感できるでしょう。
「ちりつも」プラス返済のためのお金を用意する方法:家計の見直しと節約術
「少額でもプラス返済する効果は分かったけど、そのお金をどこから捻出すれば良いのだろう?」と思われるかもしれません。ここでは、無理なく毎月プラスできるお金を用意するための、家計の見直し方や具体的な節約術をご紹介します。
重要なのは、「いきなり大きく変えようとしない」ことです。まずは、現在の支出状況を正確に把握し、少しずつ見直しを進めることから始めましょう。
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現在の家計を把握する
- まずは、1ヶ月の収入と支出を書き出してみましょう。家計簿アプリや表計算ソフトなどを活用するのも良い方法です。クレジットカードの明細や通帳の記録も参考に、何にどれくらいお金を使っているのかを「見える化」します。
- 支出を「固定費」と「変動費」に分けて整理すると、どこに無駄があるのかが見えやすくなります。
- 固定費: 家賃、通信費(スマホ代、ネット代)、水道光熱費(定額制の場合)、保険料、サブスクリプションサービス利用料など、毎月ほぼ一定額発生する費用。
- 変動費: 食費、交際費、趣味・娯楽費、被服費、日用品費、交通費など、月によって金額が変動する費用。
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固定費の見直し:一度見直せば効果が続くポイント
- 固定費は、一度見直して削減できると、その後はずっと効果が続きます。積極的に検討してみましょう。
- 通信費: 現在の契約プランが自分の利用状況に合っているか確認しましょう。格安SIMやキャリアの新しい料金プランへの変更で、毎月数千円削減できる可能性があります。
- 保険料: 加入している保険の内容が、現在のライフステージに合っているか確認しましょう。不要な特約が付いていないか、より掛け金が抑えられるプランがないか検討します。
- サブスクリプションサービス: 使っていない動画配信サービスやアプリの有料プランなどがあれば解約を検討しましょう。無料期間が終わったままになっているものがないかもチェックが必要です。
- 水道光熱費: 電力会社やガス会社を自由化された会社の中から選ぶことで、料金プランを見直せる場合があります。また、節水・節電を心がけることも重要ですが、契約プラン自体の見直しも大きな効果が見込めます。
- 固定費は、一度見直して削減できると、その後はずっと効果が続きます。積極的に検討してみましょう。
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変動費の見直し:日々の意識でコントロール
- 変動費は、日々の意識でコントロールが可能です。削減しやすい項目から取り組んでみましょう。
- 食費: 外食やコンビニ利用を減らし、自炊の頻度を増やす、まとめ買いや特売日を活用する、食材を無駄なく使い切るなどの工夫で節約できます。
- 交際費・娯楽費: 無制限に参加するのではなく、本当に大切な付き合いや、満足度の高いものに絞る意識を持つことも必要です。家で楽しめることや、お金のかからない趣味を見つけるのも良いでしょう。
- 被服費: バーゲン時期に購入する、流行に左右されないベーシックな服を選ぶ、古着やフリマアプリを活用するなど、賢くお洒落を楽しむ方法を考えましょう。
- 日用品費: ストックのしすぎに注意し、必要なものをリストアップして買い物に行く、プライベートブランドの商品を選ぶなどで節約できます。
- 変動費は、日々の意識でコントロールが可能です。削減しやすい項目から取り組んでみましょう。
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具体的な節約アイデア
- ポイ活・キャッシュレス還元: ポイント還元率の高いクレジットカードやQRコード決済などを活用し、普段の買い物でポイントを貯めて生活費に充てる。
- フリマアプリの活用: 不要になったものを売却して臨時収入を得る。
- ふるさと納税: 上手く活用すれば、所得税や住民税の控除を受けつつ返礼品を得られます。
- マイボトル・マイバッグ持参: ドリンク代やレジ袋代の節約になります。
これらの方法すべてを一度に実践する必要はありません。まずは、ご自身の家計で一番見直しやすそうな項目から一つか二つ試してみて、無理なく続けられそうなことから始めてみましょう。月々数千円を捻出するだけでも、奨学金返済にとっては大きなプラスになります。
少額プラス返済の具体的なやり方
「ちりつも」で貯めたお金や、家計を見直して捻出したお金を、奨学金のプラス返済(一部繰上返済)に充てる方法をご紹介します。日本学生支援機構(JASSO)の奨学金の場合、主に以下の方法で手続きが可能です。
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スカラネット・パーソナルを利用する(インターネット)
- JASSOのウェブサイトにある「スカラネット・パーソナル」に登録し、ログインして手続きを行います。
- インターネットからであれば、1,000円以上1円単位で、ご自身の都合の良い時にいつでも手続きができます。
- 返済期日を指定して繰り上げ返済を実行することができます。
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電話で申し込む
- JASSOの奨学金返還相談センターに電話で申し込みます。
- 指定された方法で払込(例えば、払込取扱票でのコンビニエンスストア支払いや金融機関からの振込など)を行う必要があります。
どちらの方法でも繰り上げ返済は可能ですが、金額を細かく指定でき、手軽に手続きできるスカラネット・パーソナルを利用するのがおすすめです。返済期日の数日前までに手続きを行う必要があるため、計画的に行いましょう。
「ちりつも」返済を続けるためのコツ
少額プラス返済は、継続することが大切です。モチベーションを維持し、習慣化するためのコツをいくつかご紹介します。
- 目標設定: 「〇年〇月までに〇万円プラス返済する」や「毎月〇円は必ずプラスする」など、具体的な目標を設定しましょう。
- 見える化: 返済管理サイトやアプリ、ご自身の家計簿などで、プラス返済によってどれだけ元金が減ったか、完済時期がどれだけ早まったかなどを定期的に確認し、「見える化」することで達成感が得られます。
- ご褒美: 目標を達成したら、自分にご褒美をあげるのも良いでしょう。ただし、使いすぎには注意が必要です。
- 無理のない範囲で: 家計を圧迫してまで行うと続きません。ご自身の収入や支出状況に合わせて、継続可能な金額を設定することが最も重要です。
- 緊急資金の確保: 万が一の病気や失業に備え、ある程度の生活費(目安として生活費の3ヶ月~半年分程度)を貯蓄として確保した上で、プラス返済に取り組みましょう。
まとめ:小さな一歩が大きな完済へ繋がる
奨学金返済は長期にわたるものですが、「ちりつも」の考え方を取り入れ、毎月少額でもプラスして返済に取り組むことで、着実に完済へ近づくことができます。
まずは、ご自身の奨学金の状況を確認し、スカラネット・パーソナルへの登録を済ませましょう。そして、この記事でご紹介した家計の見直し方や節約術を参考に、無理なく毎月プラスできる金額を見つけてみてください。たとえ月々数千円でも、継続することで得られる利息軽減効果や完済時期の短縮効果は、決して小さくありません。
奨学金返済は、将来のための自己投資を実らせるためのプロセスです。漠然とした不安を抱えるのではなく、小さな一歩から具体的な行動を始めて、計画的に完済を目指していきましょう。