奨学金返済が始まる前に知っておくべきこと:最初のステップと準備
はじめに:奨学金返済への第一歩
大学や専門学校などを卒業し、いよいよ社会人生活が始まる頃、多くの方が意識するのが奨学金の返済です。月々の返済額はいくらになるのか、いつから始まるのか、どうやって手続きをするのかなど、初めてのことばかりで不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。
このサイトでは、奨学金返済に関する様々な情報を提供していますが、まずこの記事では「返済が始まる前に何を知っておくべきか、何を準備すれば良いのか」という最初のステップに焦点を当ててご説明します。基礎知識がなくても安心して返済のスタートを切れるように、分かりやすく解説してまいります。
奨学金返済はいつから始まるのですか?
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金の場合、卒業・修了後、原則として貸与終了月の翌月から数えて7ヶ月目から返済が始まります。
例えば、3月に学校を卒業した場合、貸与が終了するのは3月です。そこから7ヶ月後というと、10月ということになります。つまり、最初の返済日は通常10月27日(金融機関が休業日の場合は翌営業日)となるケースが多いです。
ただし、これはあくまで一般的なスケジュールです。個々の奨学金の種類や貸与状況によって異なる場合もありますので、ご自身の正確な返済開始時期については、後述する「スカラネット・パーソナル」などで確認することが重要です。
月々の返済額はどのように決まるのですか?
月々の返済額は、主に以下の要素によって決まります。
- 奨学金の貸与総額: 借りた総額が多いほど、月々の返済額や返済期間は長くなる傾向があります。
- 利率: 借り入れた奨学金に適用される利率によって、返済総額や月々の額が変わります。利率は固定方式または見直し方式が選択できます(無利子奨学金には利率はありません)。
- 返還方式:
- 定額返還方式: 貸与総額に応じて月々の返済額が一定です。返済額が分かりやすく、計画を立てやすい方式です。
- 所得連動返還方式(平成29年度以降に第一種奨学金の貸与を受けた方など): 前年の所得に応じて、毎年の返済月額が見直されます。所得が低い期間は返済額も抑えられます。
これらの要素に基づき、返済開始前に具体的な返済計画(返還月額、返還回数、最終返還期日など)が決定されます。
自分の返済額を確認する方法
最も確実で詳細な情報を確認できるのは、日本学生支援機構(JASSO)の提供するインターネットサービス「スカラネット・パーソナル」です。
スカラネット・パーソナルでは、以下の情報を確認できます。
- 自身の奨学金の詳細情報(貸与総額、利率、返還方式など)
- 月々の返済額と返済回数
- これまでの返済状況
- 今後の返済予定
- 各種変更手続き(住所、氏名、振替口座など)
- 繰り上げ返済の手続き
スカラネット・パーソナルを利用するためには、まずは新規登録が必要です。学校を卒業する前に登録方法についての案内があるはずですので、確認しておきましょう。登録には「奨学生番号」などが必要です。
登録後は、いつでもインターネット経由でご自身の返済状況を確認できますので、積極的に活用することをおすすめします。
返済方法と、最初にやるべき手続き
奨学金の返済は、原則として登録した金融機関の口座からの自動引き落としです。現金での支払いや、振込用紙での手続きは原則行われません。
そのため、返済が始まる前に、必ず返済用の口座振替(リレー口座)の加入手続きを完了させる必要があります。この手続きが遅れると、返済が滞ってしまう原因となりますので、最も重要な準備の一つです。
口座振替の手続きは、以下の流れで行うのが一般的です。
- 手続きに必要な書類を入手する: 卒業前に学校を通じて配布されることが多いです。必要な書類や手続き方法は、日本学生支援機構のウェブサイトでも確認できます。
- 利用する金融機関を選ぶ: ご自身の都合の良い金融機関(銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行など)を選びます。インターネット専業銀行など、一部利用できない金融機関もありますので、必ず確認してください。
- 金融機関で手続きを行う: 選んだ金融機関の窓口で、必要な書類(預金通帳、届出印、本人確認書類など)を提出して手続きを行います。または、郵送での手続きや、一部金融機関ではウェブ上での手続きが可能な場合もあります。
- 手続き完了の通知を確認する: 手続きが完了すると、日本学生支援機構から「リレー口座加入・変更完了通知」のような書類が送られてきますので、内容を確認してください。
この手続きを卒業後すぐに済ませておくことで、返済開始時期に慌てることを避けることができます。
返済が始まる前に準備しておきたいこと
口座振替の手続き以外にも、返済開始に向けていくつか準備しておくと安心です。
- 家計の把握と見直し: 社会人になり収入が得られる一方で、奨学金返済という支出が増えます。まずは自身の月々の収入と支出を正確に把握し、返済額を無理なく捻出できるか家計を見直してみましょう。必要に応じて、無駄な支出がないかチェックし、節約できる部分を見つけることも大切です。
- 連絡先の確認・変更手続き: 卒業後に引っ越しや改姓などで住所や氏名が変わる場合は、必ず日本学生支援機構へ変更手続きを行ってください。大切な通知(返済計画の案内、各種制度の案内など)が届かなくなってしまう可能性があります。変更手続きはスカラネット・パーソナルからも可能です。
- 保証人の確認: 連帯保証人や保証機関(機関保証制度を利用した場合)について確認しておきましょう。将来的にご自身の返済が困難になった場合など、保証人や保証機関が代わって返済する責任を負うことになります。保証人の方にも、ご自身の返済状況について定期的に報告するなど、連携を取っておくことが望ましいです。
もし返済が難しくなった場合は?
返済が始まる前に、万が一、病気や失業などで収入が減り、返済が難しくなった場合に利用できる制度があることも知っておくと、漠然とした不安が和らぎます。
日本学生支援機構には、以下のようなセーフティネットとしての制度があります。
- 減額返還制度: 災害、病気、その他経済的理由により、奨学金の返還が困難になった場合に、月々の返還額を減額して、返還期間を延長する制度です。一時的に返済負担を軽くしたい場合に有効です。
- 返還期限猶予制度: 災害、病気、失業、経済困難などにより、奨学金の返還が困難になった場合に、一定期間、返還を待ってもらう(猶予する)制度です。猶予期間中は返還の必要はありませんが、その分返還期間は後ろ倒しになります。
これらの制度の詳細は、返済が難しくなった際の別の記事で詳しく解説しますが、「困ったときには相談できる窓口や制度がある」ということを知っておくだけでも安心材料になるかと思います。
まとめ:不安を解消し、計画的な返済を
奨学金返済の開始は、社会人としての経済的な自立を意識する重要な節目です。返済額や開始時期、手続き方法など、最初は分からないことばかりで不安を感じるのは自然なことです。
しかし、大切なのは、返済が始まる前にご自身の返済条件をしっかりと把握し、必要な手続き(特に口座振替)を期日までに完了させることです。そして、自身の家計状況と照らし合わせながら、無理のない範囲で返済計画を立てていくことです。
この記事でご紹介した最初のステップを踏むことで、不安を解消し、計画的に奨学金と向き合っていくことができるようになります。もし分からないことがあれば、一人で抱え込まず、日本学生支援機構の相談窓口などに問い合わせることも考えてみてください。
これから始まる奨学金返済に向けて、一歩ずつ着実に準備を進めていきましょう。