複数の奨学金がある場合の返済管理:把握しておくべきことと注意点
はじめに:複数の奨学金がある場合の返済への向き合い方
大学や専門学校で複数の奨学金を借りた方にとって、それぞれの返済を適切に管理することは、完済までの道のりをスムーズに進める上で非常に重要です。しかし、「どの奨学金がいくら残っているのか分からない」「返済日がバラバラで管理が大変」といった不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
この不安を解消し、複数の奨学金を賢く管理するためには、まず現状を正確に把握し、計画を立てることが大切です。この記事では、複数の奨学金がある場合に把握しておくべきこと、そしてスムーズな返済管理のための具体的なステップと注意点について解説します。
なぜ複数の奨学金返済の管理が重要なのか
奨学金の返済を滞りなく行うことは、将来の信用に影響するため非常に重要です。複数の奨学金がある場合、それぞれ異なる返済日や返済額が設定されていることが一般的です。これらの情報を正確に把握していないと、うっかり返済を忘れてしまったり、資金計画が狂ってしまったりするリスクが高まります。
返済が遅れると、遅延損害金が発生したり、信用情報機関に登録されたりする可能性があります。将来、住宅ローンや自動車ローンなどを組む際に影響が出ることも考えられます。そうした事態を避けるためにも、複数の奨学金がある場合は、意識的にそれぞれの情報を管理することが不可欠です。
ステップ1:全ての奨学金情報を正確に把握する
複数の奨学金がある場合の管理は、まずご自身が現在どのような奨学金を借りていて、それぞれの返済状況がどうなっているのかを正確に把握することから始まります。
把握すべき主な情報は以下の通りです。
- 貸与機関: 日本学生支援機構(JASSO)、各大学、地方公共団体、民間団体など
- 契約番号または奨学生番号: 各奨学金に割り当てられた固有の番号です。問い合わせ時などに必要になります。
- 貸与総額: 借りた奨学金の合計金額です。
- 現在の返済残額: これから返済する必要がある金額です。
- 返済方式: 定額返還方式か、所得連動返還方式かなどです。
- 月々の返済額: 毎月いくら返済する必要があるかです。
- 次回の返済日: いつ引き落としがあるかです。
- 最終返済予定年月: いつ頃返済が終わる見込みかです。
- 金利(有利子の場合): 返済額に影響します。
これらの情報は、奨学金の種類や貸与機関によって確認方法が異なります。
日本学生支援機構(JASSO)の場合
JASSOの奨学金は、以下の方法で情報を確認できます。
- スカラネット・パーソナル: インターネットを通じてご自身の奨学金情報を確認できるシステムです。登録することで、貸与・返還状況、月々の返済額、返済期日などをいつでも確認できます。複数の奨学金(第一種・第二種など)がある場合も、まとめて管理できます。
- 返還証明書: 奨学金の貸与が終了した際に発行される書類です。貸与総額や返還開始年月などが記載されています。
- 口座振替額通知書: 毎年10月頃に送付され、その年度の月々の返済額や年間の返済予定額が記載されています。
まずはスカラネット・パーソナルへの登録をおすすめします。複数のJASSO奨学金情報を一元的に確認できるため、管理の手間を大きく減らすことができます。
大学や地方公共団体などの奨学金の場合
JASSO以外の奨学金については、それぞれの貸与機関から送付される書類や、各機関のウェブサイトなどで情報をご確認ください。連絡先が分からなくなってしまった場合は、借りた大学の窓口や、該当の地方公共団体等に問い合わせてみることが必要です。
ステップ2:全体の返済計画を立てる
全ての奨学金情報を把握できたら、それらを一覧にして、ご自身の返済全体像を把握しましょう。
- 合計の月々の返済額: 全ての奨学金の月々の返済額を合計します。これが、毎月ご自身の家計から奨学金返済に充てる必要のある金額です。
- それぞれの返済日: 複数の奨学金がある場合、返済日が異なることが多いです。それぞれの引き落とし日を確認し、カレンダーやアプリなどに記録しておくと、引き落とし口座への入金を忘れるリスクを減らせます。
- 最も返済期間が長い奨学金: いつ頃、全ての奨学金の返済が終わるのかの目安になります。
これらの情報を整理することで、ご自身の返済負担がどれくらいかを客観的に把握できます。この負担額が、ご自身の収入や生活費と比較して無理がないかを確認し、必要に応じて家計の見直しを検討しましょう。
ステップ3:返済方法の確認と登録情報の管理
ほとんどの奨学金は口座振替による返済です。以下の点を確認しておきましょう。
- 引き落とし口座: 各奨学金がどの銀行口座から引き落とされるのか、口座番号や名義に誤りがないかを確認します。
- 残高管理: 返済日の前日までに、それぞれの引き落とし口座に十分な残高があることを確認する習慣をつけましょう。スマートフォンアプリのプッシュ通知などを活用するのも効果的です。
また、氏名や住所、振替口座などに変更があった場合は、速やかに各貸与機関に届け出る必要があります。JASSOの場合は、スカラネット・パーソナルや所定の用紙で手続きを行います。情報の変更を怠ると、重要な通知が届かなくなったり、返済に関する連絡が滞ったりする原因となります。
繰り上げ返済を検討する場合の注意点
複数の奨学金がある場合、早期完済を目指して繰り上げ返済を検討する方もいらっしゃるでしょう。繰り上げ返済を行うことで、返済期間を短縮したり、支払う利息(有利子の場合)を減らすことができます。
繰り上げ返済をする際に、どの奨学金から優先的に返済するかは、一般的に金利の高いものから行うことが効果的とされています。例えば、無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨金金を借りている場合は、第二種奨学金から繰り上げ返済をすることで、総返済額に含まれる利息分をより多く減らすことが期待できます。
ただし、繰り上げ返済を行うかどうかは、ご自身の家計状況や将来設計に合わせて慎重に判断することが重要です。無理な繰り上げ返済は、急な出費に対応できなくなるリスクも伴います。
返済が難しくなった場合の相談先と制度
複数の奨学金がある場合も、返済が難しくなった場合は、まずは各貸与機関に相談することが最も大切です。JASSOの場合は、以下の制度を利用できる可能性があります。
- 減額返還制度: 災害、傷病、その他経済的な理由により、月々の返済額を減額して返還する制度です。返済期間は延長されますが、月々の負担を軽減できます。
- 返還期限猶予制度: 災害、傷病、経済困難、失業などの事情により、返還を一時的に中断または猶予できる制度です。一定期間、返還の必要がなくなります。
これらの制度は、申請が必要であり、利用には条件があります。返済が滞る前に、早めに相談窓口に連絡することをおすすめします。
まとめ:正確な把握と計画で安心の返済を
複数の奨学金がある場合でも、一つずつ情報を整理し、全体像を把握することが、スムーズな返済管理への第一歩です。
- 全ての奨学金情報を正確に確認する。
- 全体の返済額と返済日を一覧にする。
- 返済口座の残高管理を徹底する。
- 氏名や住所変更時は速やかに手続きを行う。
- 繰り上げ返済は金利などを考慮して検討する。
- 返済困難時は早めに相談する。
これらのステップを実行し、ご自身の返済状況を常に把握しておくことで、漠然とした不安を解消し、計画的に完済を目指すことができるでしょう。