奨学金の保証制度とは?人的保証と機関保証の仕組み・メリット・デメリットを徹底比較
奨学金における「保証制度」とは?なぜ必要なのか
奨学金を借りる際、多くのケースで「保証制度」を選択する必要があります。これは、万が一、奨学金を受け取った本人が返済できなくなった場合に、借りた本人に代わって返済を肩代わりする仕組みです。奨学金という公的な資金が滞りなく循環し、次世代の学生にも届けられるようにするために、この保証制度が設けられています。
保証制度には主に二つの種類があります。「人的保証」と「機関保証」です。どちらを選択するかによって、保証の仕組みや費用負担が異なります。多くの方が奨学金を借りる際に深く考えずに選択してしまうこともありますが、それぞれの特徴を理解しておくことは、将来の返済計画を立てる上で非常に重要です。
人的保証の仕組みと特徴
人的保証は、文字通り「人」に保証人になってもらう制度です。奨学金を受ける本人の他に、原則として「連帯保証人」と「保証人」を選任する必要があります。
- 連帯保証人: 原則として父母など、奨学金を受ける本人の扶養者等が務めることが一般的です。本人と同等の返済義務を負います。本人に返済能力があるかどうかに関わらず、貸与機関(日本学生支援機構など)からの請求があれば、本人に代わって返済しなければなりません。
- 保証人: 原則として本人の4親等以内の親族で、連帯保証人とは別の方を選任する必要があります。返済能力を持つ方が務める必要があり、本人や連帯保証人が返済できない場合に、返済義務を負います。
人的保証のメリット
人的保証の最大のメリットは、保証料がかからない点です。機関保証を選択した場合に必要となる保証料の負担がありません。これは、毎月の返済額や総返済額を抑えることにつながります。
人的保証のデメリット
一方で、人的保証にはデメリットもあります。最も大きな点は、連帯保証人や保証人を探す必要があることです。また、万が一、本人の返済が滞った場合に、選任した連帯保証人や保証人に返済の請求がいきます。保証人になってくれる方には、制度の仕組みやリスクを十分に理解してもらい、同意を得る必要があります。保証人の方に精神的・経済的な負担をかけてしまう可能性がある点を十分に認識しておく必要があります。
機関保証の仕組みと特徴
機関保証は、保証機関に保証を依頼する制度です。日本学生支援機構(JASSO)の場合は、(株)日本国際教育支援協会が保証機関となります。
奨学金を受ける際に保証機関に保証を申し込むことで、保証機関が奨学金の保証を行います。人的保証のように、特定の個人に連帯保証人や保証人をお願いする必要はありません。
機関保証のメリット
機関保証の最大のメリットは、人的保証人を探す必要がないことです。親族に保証を頼みにくい場合や、適切な保証人を見つけられない場合に有効な選択肢となります。また、人的保証の場合にかかる保証人選任の手続きや、将来的に保証人に迷惑をかけてしまうかもしれないという不安を解消できます。
機関保証のデメリット
機関保証のデメリットは、保証料がかかる点です。奨学金の貸与を受ける際に、毎月の返済額に上乗せされる形で保証料を支払います。保証料の金額は、奨学金の貸与月額や返済期間などによって異なります。この保証料は、保証機関が保証を引き受けるための費用であり、奨学金とは別に支払い義務が生じます。保証料を支払っても、繰り上げ返済等を行わない限り、その保証料が返金されることはありません。
人的保証と機関保証の徹底比較
| 項目 | 人的保証 | 機関保証 | | :------------- | :----------------------------------------- | :------------------------------------------- | | 保証人 | 連帯保証人1名、保証人1名が必要 | 保証機関が保証するため不要 | | 保証料 | かからない | かかる(毎月の返済額に上乗せ) | | 手続き | 保証人選任の手続きが必要 | 保証機関への申込手続きが必要 | | 保証人の負担 | 返済滞納時に請求がいく可能性がある | 特定の個人への負担はない | | 総返済額 | 奨学金元本と利息のみ | 奨学金元本、利息に加え保証料も含む | | 主な選ぶ理由 | 保証料を抑えたい、適切な保証人がいる | 保証人を探せない、保証人に迷惑をかけたくない |
どちらの保証制度を選ぶべきか?
人的保証と機関保証には、それぞれメリットとデメリットがあります。どちらの制度を選ぶべきかは、ご自身の状況や価値観によって異なります。
- 保証料の負担を避けたい場合: 保証料がかからない人的保証が有利です。ただし、引き受けてくれる親族がいるか、そして将来的に返済が難しくなった場合に保証人に迷惑をかけてしまう可能性をどう考えるかが重要な判断材料となります。
- 保証人を探すのが難しい場合や、保証人に負担をかけたくない場合: 機関保証が適しています。保証料はかかりますが、精神的な負担を軽減でき、手続きも比較的簡便です。
どちらの制度を選択する場合でも、将来の返済計画をしっかりと立て、無理なく返済を続けられるように準備することが最も大切です。特に人的保証を選択した場合は、保証人になってくれる方にも、奨学金の貸与条件や返済計画についてきちんと説明し、理解と協力を得ることが不可欠です。
日本学生支援機構の公式サイトでは、奨学金のシミュレーションを行う際に、保証制度ごとの概算返済額や保証料を確認することができます。ご自身の借りる予定の金額で試算してみることをおすすめします。
まとめ:保証制度の正しい理解が安心な返済への第一歩
奨学金の保証制度は、万が一の場合に備える大切な仕組みです。人的保証と機関保証にはそれぞれ異なる特徴があり、メリット・デメリットが存在します。
ご自身の状況に合わせて、どちらの制度が適しているのかを比較検討し、納得した上で選択することが重要です。特に人的保証を選ぶ場合は、保証人になってくれる方への十分な説明と理解が不可欠です。
保証制度について正しく理解し、計画的な返済準備を進めることが、将来の奨学金完済に向けた安心感につながります。