奨学金返済を延滞したらどうなる?知っておくべきリスクと回避策
はじめに:奨学金返済の延滞、その不安を解消するために
奨学金の返済が始まったものの、「もし、うっかり返し忘れてしまったら?」「病気やリストラで収入が減って、返済が難しくなったらどうなるのだろう…」。このような漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
奨学金の返済は、卒業後の大切な義務です。しかし、予期せぬ事情で返済が困難になる可能性もゼロではありません。そうした時に、「延滞したらどうなるのか」を知っておくことは、不必要な不安を減らし、適切な行動をとるために非常に重要です。
この記事では、奨学金返済を延滞した場合に具体的に何が起こるのか、そのリスクと影響について詳しく解説します。さらに、延滞してしまう前に利用できる制度や、万が一延滞してしまった場合の対処法もお伝えします。奨学金との向き合い方を理解し、安心して返済を進めるための知識として、ぜひお役立てください。
奨学金返済における「延滞」とは?
まず、「延滞」とはどのような状態を指すのでしょうか。
奨学金の返済は、定められた期日(多くの場合、毎月27日)に、登録した金融機関口座から自動引き落とし、またはリレー口座(ゆうちょ銀行からの自動払込み)によって行われます。この期日までに、口座の残高が不足していたり、手続きに不備があったりして、返済ができなかった状態を「延滞」といいます。
延滞は、たった1日の遅れでも発生します。返済ができなかった場合、日本学生支援機構(JASSO)から連絡が入ることになります。
奨学金を延滞するとどうなる?具体的な影響とリスク
「延滞したらどうなるのだろう…」という不安は大きいかと思います。ここでは、延滞が続いた場合に具体的にどのような影響があるのか、段階を追ってご説明します。
1. 延滞初期(数日〜1ヶ月程度)
返済期日に引き落としができなかった場合、まず日本学生支援機構(JASSO)から「返還の振替不能通知」や、電話・文書による督促が行われます。
この段階であれば、速やかに未払い分を支払うことで、大きな問題になることは少ないです。ただし、この時点から遅延損害金が発生する場合があることに留意が必要です。(遅延損害金については後述します)
2. 延滞が続いた場合(2ヶ月〜3ヶ月程度)
延滞が2ヶ月、3ヶ月と続くと、さらに段階が進んだ督促が行われます。電話や文書による督促に加え、保証人(人的保証の場合)へも連絡が入ることがあります。また、自宅への訪問による督促が行われる場合もあります。
そして、特に重要なのが、延滞3ヶ月以上になると、個人信用情報機関に延滞の情報が登録される可能性があるということです。
- 個人信用情報機関への登録 個人信用情報機関とは、クレジットカードやローンの契約、返済状況などの情報を収集・管理している機関です。ここに延滞情報が登録されると、将来、住宅ローンや自動車ローンを組む際、クレジットカードを作る際などに審査に通りにくくなる可能性があります。これは、完済後も一定期間情報が残るため、その後のライフプランに影響を及ぼす可能性があるリスクです。
3. 長期延滞・法的措置
延滞がさらに長期間にわたると、より厳しい対応が取られます。
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一括返還請求 延滞が長期間にわたる場合、残りの奨学金全額について一括での返還を求められることがあります。
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法的措置 一括返還請求にも応じない場合、日本学生支援機構(JASSO)は法的措置(裁判所の支払督促や訴訟など)を講じる可能性があります。これにより、最終的には給与や財産の差し押さえが行われる可能性も出てきます。
遅延損害金について
延滞が発生すると、通常の返済額に加えて「遅延損害金」が発生します。遅延損害金は、延滞日数に応じて計算される損害金で、返済が遅れたことに対する金銭的な負担となります。
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利率 遅延損害金の利率は、貸与を受けた時期や奨学金の種類によって異なります。有利子奨学金よりも無利子奨学金の方が、遅延損害金の利率が高く設定されている場合があります。具体的な利率は、ご自身の貸与条件を確認するか、JASSOのホームページで確認するようにしてください。
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計算方法 遅延損害金は、「未払い元金 × 利率 × 延滞日数 ÷ 365日」で計算されます。延滞が長引くほど、この遅延損害金も膨らんでいきます。
延滞は、単に返済が遅れるだけでなく、遅延損害金の発生、個人信用情報機関への影響、そして最終的には法的措置に至るリスクがあるということを理解しておくことが大切です。
延滞を回避するために:返済が難しくなった時の相談先と制度
「返済が少し厳しいかもしれない」と感じ始めたら、延滞する前に、あるいは延滞が始まったばかりの段階で、必ず行動を起こすことが重要です。
最も大切なのは、日本学生支援機構(JASSO)に速やかに相談することです。JASSOでは、返済が困難になった方のために、いくつかの支援制度を設けています。勝手に判断せず、まずは相談してください。
相談先: * 日本学生支援機構 奨学金相談センター 電話やスカイプ、メールなどで相談することができます。返済に関する様々な疑問や不安について、専門の職員に相談できます。
利用できる主な制度:
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減額返還制度 災害、病気、失業、経済困難などにより、毎月の返済額を減らすことができる制度です。この制度を利用すると、一度あたりの返済額は少なくなりますが、その分返済期間は長くなります。あくまで一時的に負担を減らすための制度であり、返済義務自体がなくなるわけではありません。
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返還期限猶予制度 病気や失業、経済困難、育児休業など、特定の事情により返済が困難になった場合に、一定期間返済を中断できる制度です。猶予された期間の利息はかかりませんが(有利子奨学金の場合)、猶予期間が終了すると、返済は再開され、その分返済期間は後ろ倒しになります。こちらも返済義務自体がなくなるわけではありません。
これらの制度を利用するには、それぞれ申請手続きが必要です。申請には、理由を証明する書類(診断書、失業証明書、所得証明書など)が必要となる場合があります。制度の利用条件や手続きの詳細は、日本学生支援機構(JASSO)のホームページで確認するか、奨学金相談センターに問い合わせて確認してください。
重要なのは、「返済できない」と諦めるのではなく、「返済するためにどうすれば良いか」をJASSOと一緒に考える姿勢です。
もし延滞してしまったら?迅速な対応が重要
万が一、返済期日に間に合わず延滞してしまった場合でも、焦らず、しかし迅速に対応することが大切です。
1. すぐに日本学生支援機構(JASSO)に連絡する
延滞に気づいたら、まずJASSOの奨学金相談センターに連絡してください。延滞してしまった理由や、いつまでに返済できるかなどを正直に伝えることが重要です。連絡をしないまま放置しておくと、督促が厳しくなり、前述のようなリスクが高まります。早めに連絡することで、今後の対応について相談に乗ってもらえる可能性があります。
2. 未払い分の返済方法を確認する
延滞してしまった分の返済方法について、JASSOの指示に従ってください。多くの場合、再引き落としや、指定された口座への振込などの方法が案内されます。遅延損害金を含めた金額を確認し、速やかに支払いを済ませるようにしてください。
3. 今後の返済について相談する
一度延滞してしまったということは、毎月の返済額や家計の状況に無理がある可能性が考えられます。延滞を解消したとしても、今後も返済が厳しい状況が続くようであれば、前述の減額返還制度や返還期限猶予制度の利用を検討し、JASSOに相談することをおすすめします。
まとめ:延滞のリスクを理解し、計画的な返済と早めの相談を
奨学金の延滞は、遅延損害金の発生、個人信用情報機関への影響、そして最終的には法的措置に繋がる可能性など、様々なリスクを伴います。これらのリスクを避けるためには、以下の点が重要です。
- 返済計画をしっかり立てる: 毎月の返済額を確認し、無理のない家計管理を心がけることが基本です。
- 返済用口座の残高を確認する: 返済期日の前に、必ず引き落とし口座の残高を確認しましょう。
- 返済が難しくなったら放置しない: 「返済が厳しいかも」と感じ始めたら、延滞する前に、あるいは延滞してしまっても、すぐに日本学生支援機構(JASSO)に相談してください。
- 利用できる制度を知っておく: 減額返還制度や返還期限猶予制度など、返済をサポートする制度があります。いざという時のために、これらの制度について知っておくことが大切です。
奨学金返済は長期にわたるものですが、リスクを正しく理解し、計画的に返済を進めること、そして困難になった時にはためらわずに相談することが、完済への一番の近道です。この記事が、あなたの奨学金返済に対する不安を少しでも和らげ、前向きに取り組むための一助となれば幸いです。