奨学金返済、年間いくら返せている?計画とモチベーション維持のコツ
はじめに:奨学金返済を「見える化」し、計画的に進める大切さ
奨学金の返済は、卒業後から始まり、多くの場合、長期間にわたって続きます。毎月の返済を続ける中で、「本当に終わるのだろうか」「あとどれくらいかかるのだろうか」と漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
奨学金返済を乗り越え、計画的に完済を目指すためには、ただ毎月決められた額を返済するだけでなく、ご自身の返済状況を具体的に把握し、年間での目標を設定することが非常に有効です。これにより、返済の全体像が見えやすくなり、完済に向けたモチベーションを維持しやすくなります。
この記事では、奨学金返済の年間計画を立てる方法、進捗を確認する具体的な手段、そして完済まで意欲を保つためのコツについて詳しく解説します。
なぜ奨学金返済で「年間計画」が重要なのか
奨学金の返済は、月々の金額に注目しがちですが、年間を通してどれだけ返済が進んでいるかを意識することで、様々なメリットがあります。
- 返済の「見える化」: 年間での返済額や目標を設定することで、漠然としていた返済の終わりが具体的に見えやすくなります。
- 目標設定によるモチベーション維持: 年間の目標を達成することで、達成感を得られ、継続的なモチベーションにつながります。
- 計画的な資金管理: 年間目標を達成するために、家計のどこを見直せば良いか、どのくらい貯蓄や繰り上げ返済に回せるかなど、具体的な資金計画を立てやすくなります。
- 早期完済の可能性: 年間目標に繰り上げ返済を組み込むことで、返済期間を短縮し、結果的に支払う利息を減らすことにもつながります(有利子奨学金の場合)。
ご自身の年間返済額を把握する
まずは、現在ご自身が年間でどのくらいの奨学金を返済しているのかを確認しましょう。これは非常にシンプルな計算です。
- 年間返済額 = 毎月の返済額 × 12ヶ月
例えば、毎月の返済額が1万5千円の場合、年間返済額は 1万5千円 × 12ヶ月 = 18万円 となります。
ここに、もしボーナスなどで繰り上げ返済を行った場合は、その金額を合計します。
- 年間の総返済額 = (毎月の返済額 × 12ヶ月) + その年の繰り上げ返済額
この金額が、1年間で元金と利息(有利子の場合)に対してどれだけ充当されたかを示す基本的な数字となります。
無理のない年間目標を設定してみましょう
ご自身の年間返済額を把握したら、次に年間でどのくらい返済を進めたいかの目標を設定してみましょう。この目標は、必ずしも毎月の基本返済額の12ヶ月分である必要はありません。少しでも早く完済したい場合は、繰り上げ返済分を目標に含めることを検討します。
- 目標設定の例:
- 「年間で〇〇万円の返済を目指す」
- 「年間で基本返済額の〇ヶ月分を繰り上げ返済する」
- 「今年のボーナスでは〇〇円を繰り上げ返済に充てる」
目標を設定する際は、ご自身の収入や支出、ライフイベントの予定などを考慮し、無理のない範囲で決めることが大切です。高すぎる目標は継続が難しく、モチベーション低下につながる可能性もあります。まずは少しだけ、年間で数万円の繰り上げ返済を目標に設定することから始めても良いでしょう。
年間目標達成のための具体的な方法
設定した年間目標を達成するために、具体的な行動を考えます。
-
家計の見直し:
- 固定費の削減: 通信費(携帯料金やインターネット)、サブスクリプションサービス、保険料など、毎月定額でかかる費用を見直します。不要なサービスを解約したり、より安価なプランに変更したりすることで、継続的な節約効果が見込めます。
- 変動費の見直し: 食費、交際費、趣味娯楽費など、月によって金額が変わる費用を見直します。予算を決めて管理したり、無駄な買い物を減らしたりする工夫が有効です。
-
収入アップの検討:
- 本業での昇給を目指す、資格取得などスキルアップを図る、副業を検討するなど、収入を増やす方法を考えることも、返済ペースを上げる一つの手段です。ただし、ご自身の本業や健康状態を考慮し、無理のない範囲で行うことが重要です。
-
臨時収入の活用:
- ボーナスや残業代、お年玉など、普段の給与とは別の臨時収入があった際に、その一部または全額を繰り上げ返済に充てることを検討します。まとまった金額を繰り上げ返済することで、元金が効率よく減り、返済期間や総返済額を大きく減らす効果が期待できます。
-
利用できる制度の確認:
- もし一時的に収入が減って返済が難しくなった場合は、返還期限猶予制度や減額返還制度といった日本学生支援機構(JASSO)の支援制度の利用を検討します。これらの制度を適切に利用することも、無理なく完済を目指す上で大切な計画の一部です。
進捗を定期的に確認する方法
設定した年間目標に対して、どのくらい進捗しているのかを定期的に確認することが、モチベーション維持につながります。
- スカラネット・パーソナル: JASSOが提供するインターネットサービスです。ご自身の返済状況(貸与額、返済額、残高、今後の返済予定など)を詳細に確認できます。年に一度はログインして、年間の返済実績や残り期間を確認することをおすすめします。
- 金融機関の通帳/アプリ: 奨学金が引き落とされている口座の通帳やアプリで、毎月の引き落とし状況を確認します。繰り上げ返済を行った際も、ここで確認できます。
- 年間での振り返り: 年末や年度末など、区切りの良い時期に、その1年間でどれだけ返済が進んだか、目標は達成できたかなどを振り返ります。そして、次年度の目標を設定し直します。
完済までモチベーションを維持するコツ
奨学金返済は長期にわたるため、途中でモチベーションが下がることもあるかもしれません。以下のコツを参考に、前向きに取り組んでみましょう。
- 返済額の「見える化」: スカラネット・パーソナルで残高が減っていく様子を確認したり、ご自身で簡単なグラフを作成したりして、返済が進んでいることを視覚的に捉えられるようにします。
- 小さな成功体験を積み重ねる: 無理のない範囲で数千円でも繰り上げ返済を行い、「今月は少しだけ多く返せた」という成功体験を積み重ねることで、達成感を得られます。
- 目標達成のご褒美: 年間目標を達成できたら、自分にご褒美を与えるなど、楽しみを作ることも効果的です。ただし、ご褒美で使いすぎて返済計画が崩れないように注意が必要です。
- 完済後の生活を具体的にイメージする: 「完済したら、毎月の返済額分を貯蓄に回そう」「旅行に行こう」など、返済が終わった後の自由な生活を具体的にイメージすることで、モチベーションを維持しやすくなります。
- 情報交換(無理のない範囲で): 友人や家族など、信頼できる人と奨学金返済について話してみることも、一人で抱え込まず、気持ちを整理する助けになる場合があります。ただし、プライベートな情報なので、話す相手は慎重に選びましょう。
計画の見直しも柔軟に行いましょう
人生には様々な変化があります。転職による収入の変化、結婚や出産といったライフイベントなど、奨学金返済計画に影響を与える出来事が起こる可能性も考えられます。
設定した年間計画はあくまで目標であり、計画通りに進まないことも十分にあり得ます。状況が変わった際は、無理に当初の計画に固執せず、柔軟に見直しを行うことが大切です。必要に応じて、先ほど触れたJASSOの支援制度の利用も検討しながら、ご自身の状況に合わせた無理のないペースで返済を続けることが、完済への一番の近道となります。
まとめ:計画的に、前向きに完済を目指しましょう
奨学金返済は、決して楽な道のりではないかもしれません。しかし、ご自身の返済状況を把握し、年間での具体的な目標を設定し、その進捗を確認しながら計画的に進めることで、漠然とした不安は軽減され、完済への道のりが見えやすくなります。
この記事でご紹介した年間計画の立て方やモチベーション維持のコツを参考に、ご自身のペースで、しかし着実に返済を進めていただければ幸いです。計画的に、そして前向きに奨学金完済を目指していきましょう。