奨学金返済は住宅ローン審査にどう影響する?知っておきたいポイント
奨学金返済中の若手社会人にとって、将来の大きなライフイベントである住宅購入や自動車購入は、大きな目標の一つかと思います。しかし、「奨学金の返済があると、住宅ローンや自動車ローンの審査に通らないのではないか?」といった不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、奨学金返済がこれらのローン審査にどのように影響する可能性があるのか、そして審査に向けてどのような点に気をつけるべきかについて、分かりやすく解説します。
住宅ローン審査で見られる主なポイント
金融機関が住宅ローンの審査を行う際に重視するのは、「借りたお金をきちんと返済できる能力があるか」という点です。具体的には、主に以下の点が確認されます。
- 返済能力: 年収、勤務先の安定性、勤続年数などが評価されます。収入に対して無理のない返済計画であるか、長期的に安定した収入が見込めるかなどが判断されます。
- 信用情報: クレジットカードの利用履歴や、他のローンの返済状況などが記録された信用情報機関の情報が参照されます。過去に延滞や債務整理などがあると、審査に不利に働く可能性があります。
- 借り入れ状況: 現在借り入れている他のローン(自動車ローン、カードローン、奨学金など)の状況や、毎月の返済額が確認されます。これらの借入額が多いと、住宅ローンの返済に充てられる収入が少ないと判断されることがあります。
- 物件の担保評価: 購入する物件の価値が評価されます。
- 頭金の金額: 頭金が多いほど、借入額が少なくなるため審査に有利になる場合があります。
奨学金返済が住宅ローン審査に与える影響
奨学金は、多くの場合は無利子または低金利であり、一般的な借金とは性質が異なります。しかし、毎月決まった金額を返済していく義務がある点では他のローンと同様です。そのため、住宅ローン審査においては、奨学金返済も「現在の借り入れ」として見なされ、以下の点に影響する可能性があります。
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返済負担率への影響: 住宅ローンの審査では、「返済負担率」が非常に重要視されます。これは、「年収に対する年間返済額の割合」を示す指標です。 年間返済額には、住宅ローンの返済だけでなく、奨学金の返済や自動車ローン、カードローンなどの他のローンの年間返済額も含まれることが一般的です。 例えば、年収400万円で、年間36万円(月3万円)の奨学金返済がある場合、住宅ローン審査ではこの36万円も返済負担率の計算に含められる可能性が高いです。 返済負担率が高すぎると、「住宅ローンを借りても、毎月の返済が厳しくなる可能性がある」と判断され、審査に通らない、あるいは借入希望額が減額されるといった影響が出ることがあります。多くの金融機関では、返済負担率の目安を30%~35%程度としています。
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信用情報への影響: 奨学金の返済を延滞すると、信用情報機関にその情報が登録される可能性があります。特に、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は、一定期間以上の延滞で信用情報機関に登録される仕組みになっています。 信用情報に延滞の記録(いわゆる「ブラックリスト」とは異なりますが、ネガティブな情報として扱われます)があると、住宅ローンに限らず、あらゆるローンの審査に非常に不利に働きます。過去に延滞した経験がある場合は、ご自身の信用情報を取り寄せて確認することも検討できます。
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総借り入れ額への影響: 奨学金の残高も、金融機関によっては借り入れ総額の一部として見なされることがあります。借入総額が多いと、返済能力を疑問視される要因となる可能性があります。
奨学金返済中の方が住宅ローン審査に向けてできる対策
奨学金返済があるからといって、必ずしも住宅ローンが組めないわけではありません。計画的に以下の対策を行うことで、審査に通りやすくなる可能性があります。
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奨学金返済の延滞を絶対に避ける: これが最も重要です。たった一度の延滞でも信用情報に傷がつく可能性があります。引き落とし口座の残高を常に確認し、確実に返済できるように管理を徹底してください。万が一、返済が難しくなった場合は、延滞する前に必ず日本学生支援機構(JASSO)などの窓口に相談し、減額返還や返還期限猶予といった制度の利用を検討しましょう。
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他の借り入れを減らす・なくす: カードローンやキャッシングなど、比較的高金利な他の借り入れがある場合は、優先的に返済し、可能であればローン審査を受ける前に完済しておくことを強くおすすめします。これらの借り入れは、住宅ローン審査において返済能力を圧迫する要因となりやすいからです。
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繰り上げ返済で奨学金の残高を減らす: もし可能であれば、奨学金の繰り上げ返済を行うことで、総返済額を減らせるだけでなく、毎月の返済額が減る(返済方式による)か、残高が減ることで返済負担率や総借り入れ額への影響を軽減できる可能性があります。特に、審査を受ける時期が近づいている場合は、まとまった金額を繰り上げ返済するのも有効な対策の一つです。
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頭金を準備する: 住宅購入価格に対する借入額の割合(LTV: Loan To Value)が低いほど、金融機関のリスクが軽減されるため、審査に有利に働くことがあります。頭金を多めに準備することで、借入希望額を減らし、返済負担率を下げることにもつながります。奨学金返済と並行して、計画的に頭金の貯蓄を進めましょう。
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家計全体を見直す: 毎月の奨学金返済に加えて、住宅ローンの返済が始まると、家計に占める返済額の割合が大きくなります。住宅ローン審査では、申込者の返済能力だけでなく、将来にわたって安定して返済できるかという点も見られます。日頃から無駄遣いをなくし、計画的な家計管理ができていることを示すためにも、固定費(通信費、保険料など)や変動費(食費、娯楽費など)の見直しを行い、返済と貯蓄の両立ができる家計体質を作ることを意識しましょう。
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金融機関に相談する: 住宅ローンの利用を検討する際には、早い段階で複数の金融機関に相談することをおすすめします。奨学金の返済があることを正直に伝え、ご自身の収入や他の借り入れ状況を踏まえた上で、どの程度の借入が可能か、どのような点が審査で重視されるかなどを確認することができます。金融機関によっては、奨学金返済に対する考え方が異なる場合もあります。
住宅ローン以外のローン審査への影響
自動車ローンや教育ローン、その他の目的別ローンなどの審査においても、基本的な考え方は住宅ローンと同様です。奨学金の毎月返済額は返済能力や返済負担率に影響し、延滞があれば信用情報を通じて不利に働く可能性があります。
これらのローンを検討する際も、まずは奨学金返済をきちんと行っているか、他に延滞している借り入れはないかを確認することが重要です。
まとめ:計画的な返済と総合的な資金計画を
奨学金返済中の若手社会人が住宅ローンなどを組む際には、奨学金返済額が返済能力や信用情報に影響を与える可能性があります。しかし、最も大切なのは、奨学金を含む全ての借り入れに対して、日頃から真面目に、そして計画的に返済を行っていくことです。
延滞を避け、他の借り入れを整理し、可能な範囲で奨学金の繰り上げ返済や頭金の準備を進めるなど、ご自身の返済能力を高めるための努力は、住宅ローン審査だけでなく、将来の健全な家計運営にもつながります。
将来のライフイベントに向けて、今のうちから奨学金を含めたご自身の借り入れ状況を正確に把握し、無理のない返済計画と貯蓄計画を立てておくことが、安心して未来を迎えるための第一歩となるでしょう。