奨学金完済ガイド

奨学金の繰り上げ返済で得られるメリットとは?デメリットと具体的なやり方

Tags: 奨学金, 返済, 繰り上げ返済, 早期完済, 節約

はじめに

奨学金の返済は、卒業後から長期にわたって続く場合が多く、毎月の返済に負担や不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。奨学金の返済方法には、毎月決められた金額を返す「約定返済」の他に、「繰り上げ返済」という選択肢があります。

繰り上げ返済をうまく活用することで、返済総額を減らしたり、完済までの期間を短縮したりすることが可能です。この方法について、「どのようなメリットがあるのか」「注意点はないのか」「どうやって手続きするのか」といった疑問をお持ちの方に向けて、繰り上げ返済の仕組みと具体的な進め方について詳しく解説します。

繰り上げ返済とは

繰り上げ返済とは、毎月決められた約定返済額とは別に、まとまった金額を任意に返済する方法です。この繰り上げ返済で支払った金額は、全て奨学金の元金に充当されるという点が重要なポイントです。

通常の約定返済では、返済額の一部が利息に充当され、残りが元金に充当されます(有利子奨学金の場合)。しかし、繰り上げ返済分は元金のみを減らすことができます。これにより、元金の減りが早くなり、その後の利息の計算対象となる元金も減少します。

繰り上げ返済の主なメリット

奨学金の繰り上げ返済を行うことには、いくつかのメリットがあります。

返済総額(特に利息)を減らせる

最も大きなメリットの一つは、有利子奨学金の場合に支払う利息の総額を減らすことができる点です。繰り上げ返済によって元金が早く減ることで、将来支払うべき利息の計算対象となる元金が小さくなります。これにより、結果として返済総額全体が減少します。特に返済期間が長く残っている場合や、繰り上げ返済額が大きいほど、利息軽減効果は大きくなります。無利子奨学金(第二種奨学金のうち令和2年度までに貸与を開始し、かつ特定の要件を満たす場合の利息)の場合でも元金が早く減るため、後述する返済期間短縮のメリットは得られます。

完済までの期間を短縮できる

繰り上げ返済によって元金が減ることで、その後の返済計画における最終的な完済時期を早めることができます。例えば、毎月の返済額を変えずに繰り上げ返済を行った場合、予定よりも早く全ての返済を終えることが可能になります。返済期間が短くなることで、長期にわたる返済の負担感から早く解放されることにつながります。

精神的な負担の軽減

奨学金の返済は時に心理的な負担となることがあります。繰り上げ返済によって残りの返済額や期間が目に見えて減ることは、完済へのモチベーションを高め、精神的な安心感を得ることにも繋がります。将来のライフプランを立てやすくなるという側面もあります。

繰り上げ返済の注意点・デメリット

繰り上げ返済にはメリットがある一方で、注意しておきたい点も存在します。

手元の資金が減る

繰り上げ返済を行うということは、貯蓄など手元にあるまとまった資金を使うことになります。これにより、急な支出が必要になった場合(病気、冠婚葬祭、失業、引っ越しなど)に対応できる手元資金が不足するリスクが生じる可能性があります。奨学金の返済に充てる金額と、万が一の時に備える資金とのバランスを十分に検討することが重要です。

計画的な実行が必要

繰り上げ返済は計画的に行う必要があります。無理をして生活費を削ったり、必要な貯蓄まで返済に充ててしまったりすると、かえって生活が苦しくなる可能性があります。ご自身の収入や支出の状況、将来のライフイベントなどを踏まえて、無理のない範囲で実行することが大切です。

繰り上げ返済の具体的なやり方(日本学生支援機構の場合)

多くの奨学金利用者が対象となる日本学生支援機構(JASSO)の奨学金について、繰り上げ返済の具体的な手続き方法をご紹介します。

繰り上げ返済は、「全額返済」と「一部返済」のどちらかを選択できます。

手続きは主に以下の方法があります。

  1. スカラネット・パーソナルからの申込み:

    • インターネット上の「スカラネット・パーソナル」にログインし、「繰上返還申込み」のメニューから手続きを行います。
    • 原則として24時間365日申込みが可能で、最も手軽な方法です。
    • 手続き画面の指示に従って、繰り上げ返済したい金額や返済方法(金融機関からの自動引き落とし、または振込)などを入力します。
  2. 郵送での申込み:

    • 日本学生支援機構のウェブサイトから「繰上返還申出書」をダウンロードし、必要事項を記入して郵送で提出します。
    • または、電話で書類を取り寄せることも可能です。
    • 申出書が機構に届いた後、約定返済用の口座から引き落とされるか、または指定された金融機関に振り込む形での返済となります。

注意点: * 手続きの期日や引き落とし(または振込)の日は定められています。スカラネット・パーソナルで申し込む場合は画面上で確認できます。郵送の場合は機構からの通知をご確認ください。 * 申込みから実際の返済完了までには一定の期間がかかります。余裕をもって手続きを進めることをおすすめします。 * 手続きの詳細や最新の情報については、必ず日本学生支援機構の公式ウェブサイトをご確認ください。

繰り上げ返済を検討する際のポイント

繰り上げ返済は有効な手段ですが、行うかどうかはご自身の状況に合わせて慎重に判断することが大切です。以下の点を考慮して検討してみてください。

まとめ

奨学金の繰り上げ返済は、特に有利子奨学金において、支払う利息を減らし、返済総額を軽減できる有効な手段です。また、完済までの期間を短縮し、精神的な負担を軽減する効果も期待できます。

しかし、手元資金が減少する可能性や、他の借入との兼ね合い、将来のライフプランなどを考慮せず無理に行うことは避けるべきです。ご自身の経済状況や今後の見通しを十分に検討し、緊急予備資金を確保した上で、計画的に実行することが何よりも重要です。

日本学生支援機構のウェブサイトで提供されている情報やシミュレーションツールなども活用しながら、ご自身にとって最適な返済計画を立てていくことをおすすめします。着実な返済と賢い繰り上げ返済の活用が、奨学金完済への道のりをスムーズに進める手助けとなるでしょう。