奨学金を「目標年数」で完済するシミュレーション:具体的な計画の立て方
奨学金返済に「目標年数」を設定する重要性
奨学金の返済は、多くの場合、借りた金額や返済方式によって決められた期間で自動的に進んでいきます。毎月の返済額は決まっているものの、返済期間が長く感じられたり、総額がどれくらいになるのか漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
こうした不安を解消し、前向きに返済に取り組むための一つの方法が、「いつまでに完済したいか」という具体的な目標年数を設定することです。目標を持つことで、現在の返済状況をより具体的に捉え、早期完済に向けた具体的な行動計画を立てやすくなります。
この記事では、奨学金を目標年数で完済するために、どのように計画を立て、必要な追加返済額をシミュレーションするのか、具体的な方法をご紹介します。
なぜ目標年数を設定すると良いのか?
目標年数を設定することには、いくつかのメリットがあります。
- モチベーションの維持: 終わりが見えづらいと感じがちな長期の返済において、「あと何年で終わる」という具体的な目標は、返済へのモチベーションを高く保つ助けになります。
- 計画的な行動の促進: 目標達成のために「毎月あといくら返せば良いのか」「いつ、どれくらいの金額を繰り上げ返済すれば効果的か」といった具体的な行動が見えてきます。
- 将来設計との連携: 結婚、住宅購入、出産など、将来のライフイベントと奨学金完済時期を関連付けて考えることで、より現実的なライフプランを立てやすくなります。
- 返済総額の軽減: 早期に完済することで、特に有利子奨学金の場合は、支払うべき利息の総額を減らすことができます。
目標年数を設定する際の考え方
目標年数は、ご自身の現在の収入、支出、将来のライフプランなどを考慮して、無理のない範囲で設定することが大切です。
- 現在の経済状況の把握: 毎月の収入、固定費(家賃、通信費など)、変動費(食費、交際費など)を正確に把握し、毎月返済に充てられる金額の目安をつけます。
- 貯蓄計画との両立: 奨学金返済だけでなく、将来のための貯蓄も同時に進めることが重要です。緊急予備資金の確保や、将来必要になるまとまった支出(結婚資金、頭金など)のための貯蓄も考慮に入れます。
- 将来の収入・支出の変化を予測: 昇給の可能性や、結婚、出産、転職といったライフイベントによる収入や支出の変化も考慮すると、より現実的な目標設定ができます。
- 無理のない期間設定: 目標年数を短く設定しすぎると、毎月の負担が大きくなり、生活が圧迫される可能性があります。継続可能な期間を設定することが重要です。
目標年数で完済するためのシミュレーション方法
目標年数を設定したら、次にその目標を達成するために必要な追加返済額をシミュレーションします。
1. 現在の返済状況を確認する
まずは、現在の奨学金の借入残高、適用金利、そして現在の月々の返済額と、このまま返済を続けた場合の完済予定年月を確認します。これらの情報は、日本学生支援機構(JASSO)のスカラネット・パーソナルで確認することができます。
2. 目標年数で完済するための必要月額を計算する
目標年数で完済するために、毎月いくら返済する必要があるのかを計算します。これは少し複雑な計算になりますが、JASSOのウェブサイトにある「奨学金返還シミュレーション」を利用すると便利です。
JASSO奨学金返還シミュレーションの活用
JASSOのウェブサイトには、現在の借入残高や金利、目標とする返還終了年月を入力することで、毎月または毎年の返還額を試算できるシミュレーションツールが提供されています。
- JASSOのウェブサイトにアクセスします。
- 「奨学金返還シミュレーション」のページを探します。(返還に関する情報ページ内にあります)
- 「毎月の返還額を試算する」や「返還終了年月から毎月の返還額を試算する」といった項目から、目標年数(返還終了年月)を設定できるシミュレーションを選びます。
- 現在の借入残高、適用金利などの必要情報を入力します。
- 目標とする返還終了年月を入力して試算します。
この試算結果で表示される「毎月の返還額」が、目標年数で完済するために必要な月々の返済額となります。
3. 追加返済額を把握する
シミュレーションで算出された目標達成のための月々返済額と、現在の月々返済額を比較します。
追加返済額 = 目標達成のための月々返済額 - 現在の月々返済額
この追加返済額が、目標年数で完済するために、毎月または計画的に繰り上げ返済などで上乗せする必要がある金額となります。
シミュレーション例
例として、借入残高が100万円、適用金利(固定)が0.5%、現在の月々返済額が10,000円で、このまま返済すると完済まで約10年かかる方がいるとします。この方が「5年で完済したい」と目標を設定した場合を考えます。
JASSOのシミュレーションツールなどで、借入残高100万円、金利0.5%で5年で完済するための月々返済額を試算すると、例えば約16,890円となったとします。
この場合、目標達成のために必要な追加返済額は、
16,890円(目標達成のための月額) - 10,000円(現在の月額) = 6,890円
となります。つまり、この方は毎月約6,890円を追加で返済する必要がある、あるいはまとめて繰り上げ返済を行う必要があると分かります。
追加返済額を捻出するための具体的な方法
シミュレーションによって必要な追加返済額が分かったら、その金額をどのように捻出するかを考えます。
- 月々の返済額に上乗せする(一部繰り上げ返済): 余裕のある月に、現在の返済額に上乗せして返済します。例えば、上記の例でいえば毎月6,890円を現在の返済とは別に返済していく、あるいは「随時振込」などで返済する方法があります。少額でも継続することで、「ちりつも」のように完済時期を早める効果があります。JASSOのスカラネット・パーソナルから手続きが可能です。
- ボーナスなどの一時収入を活用する(一部繰り上げ返済): ボーナスや副業での収入、臨時収入など、まとまったお金が入った際に、繰り上げ返済に充てます。一度に大きな金額を返済すると、元金が大きく減り、利息軽減効果も高くなります。
- 家計の見直しによる節約: 固定費(通信費、保険料など)や変動費(食費、娯楽費など)を見直し、無駄な支出を削減します。削減できた分を追加返済に回すことで、生活レベルを大きく変えずに返済を加速できます。具体的な節約術については、関連する他の記事も参考にしてみてください。
- 支出管理の徹底: 家計簿アプリなどを活用して日々の支出を記録し、自分が何にどれだけお金を使っているかを把握することで、自然と無駄遣いが減り、返済に回せるお金が増えることがあります。
計画実行と定期的な見直し
目標年数を設定し、具体的な計画を立てたら、まずは実行に移してみましょう。そして、一度立てた計画で満足せず、定期的に見直すことが重要です。
- 返済状況の確認: スカラネット・パーソナルで定期的に返済状況や残高を確認し、計画通りに進んでいるかチェックします。
- 計画の修正: 収入が増減したり、予期せぬ支出が発生したりするなど、状況は変化します。計画通りに進まない場合や、さらに早期完済が可能になった場合は、計画を見直して修正しましょう。
- モチベーションの維持: 目標達成までの道のりを記録したり、完済後の目標を具体的にイメージしたりすることで、モチベーションを維持しやすくなります。
計画実行にあたっての注意点
早期完済を目指すことは素晴らしい目標ですが、無理な計画は禁物です。
- 生活資金の確保: 奨学金返済を優先しすぎるあまり、日々の生活に必要な資金や、急な支出に対応できる貯蓄を取り崩してしまうことのないように注意してください。
- 無理のない範囲で: 返済計画は、ご自身のライフスタイルや経済状況に合わせて、継続可能な範囲で立てましょう。過度な節約はストレスにつながり、かえって計画が頓挫する原因となることもあります。
- 困った時は相談を: もし返済が厳しくなった場合は、一人で抱え込まず、JASSOに相談してください。減額返還制度や返還期限猶予制度など、困った時のための支援制度が用意されています。
まとめ
奨学金返済に具体的な「目標年数」を設定することは、返済をより計画的に、そして前向きに進めるための有効な手段です。現在の返済状況を把握し、JASSOのシミュレーションツールなどを活用して目標達成に必要な追加返済額を知ることから始めましょう。
そして、家計の見直しや繰り上げ返済などを活用して、具体的な計画を実行してください。ただし、無理はせず、ご自身の生活や将来設計とのバランスを大切にしながら進めることが重要です。計画は定期的に見直し、必要に応じて修正しながら、着実に完済を目指していきましょう。