奨学金有利子の金利タイプ:固定と変動の違いと返済総額への影響
はじめに:有利子奨学金の金利タイプを理解することの重要性
大学や専門学校などで奨学金を利用された方の中には、返済が必要な「有利子奨学金」を受け取った方もいらっしゃるでしょう。有利子奨学金の返済では、借りた元金に加えて利息を支払う必要があります。
この利息の計算に影響を与えるのが「金利タイプ」です。奨学金の金利タイプには、主に「固定金利」と「変動金利」の2種類があります。ご自身の奨学金がどちらの金利タイプであるか、そしてそれぞれの特徴を理解しておくことは、将来の返済計画を立てる上で非常に重要です。
この違いを知ることで、返済総額がどのように変動する可能性があるのか、ご自身の家計状況や将来の見通しに合わせてどのように備えるべきかを考える手助けとなるでしょう。
奨学金の金利タイプは2種類:固定金利と変動金利
有利子奨学金である「日本学生支援機構(JASSO)の第二種奨学金」には、主に以下の2つの金利タイプがあります。
固定金利とは
「固定金利」は、奨学金の貸与が終了する際に決定された金利が、返済期間中ずっと変わらないタイプです。市場の金利が上昇しても下降しても、ご自身の奨学金に適用される金利は一定です。
変動金利とは
「変動金利」は、市場金利の動きに合わせて、適用される金利が見直されるタイプです。JASSOの変動金利は、半年ごと(4月と10月)に見直しが行われます。市場金利が上昇すれば奨学金の金利も上昇する可能性がありますし、市場金利が下降すれば金利も下降する可能性があります。
あなたの奨学金はどちらの金利タイプ?確認方法
ご自身の奨学金が固定金利か変動金利かは、奨学金の「貸与利率決定通知」や「返還確認票」で確認することができます。これらの書類は、JASSOから送付されていますので、お手元にあるかご確認ください。
また、JASSOのスカラネット・パーソナルでも、ご自身の奨学金情報や現在の返済状況を確認できます。ログインして「奨学金情報」の項目をご覧ください。
もし書類が見当たらない場合や、確認方法が分からない場合は、JASSOの相談窓口に問い合わせてみてください。
固定金利と変動金利、それぞれのメリット・デメリット
それぞれの金利タイプには、メリットとデメリットがあります。ご自身の奨学金の金利タイプについて、以下の点を踏まえて理解を深めましょう。
固定金利のメリット・デメリット
- メリット:
- 返済期間中の金利が一定のため、将来の返済額や総額を予測しやすいです。返済計画を立てやすく、金利変動によるリスクを回避できます。
- 市場金利が上昇しても、ご自身の金利は影響を受けません。
- デメリット:
- 市場金利が下降しても、ご自身の金利は下がりません。変動金利を選択していた場合に比べて、結果的に支払う利息が多くなる可能性があります。
変動金利のメリット・デメリット
- メリット:
- 市場金利が下降した場合、ご自身の金利も下がり、支払う利息が減る可能性があります。
- 一般的に、貸与開始時点では固定金利よりも低い金利が適用される傾向があります。
- デメリット:
- 市場金利が上昇した場合、ご自身の金利も上がり、返済額や返済総額が増加するリスクがあります。将来の返済負担が予測しにくい側面があります。
- 金利の見直しは定期的に行われるため、その都度返済額が変動する可能性があります(ただし、JASSOでは激しい金利上昇があった場合でも、急激な返済額増加を防ぐための措置が取られることがあります)。
金利変動が返済額にどう影響するか
変動金利の場合、半年ごとの金利見直しによって、将来の返済額や総額が変わる可能性があります。金利が上昇すれば、支払う利息が増えるため、同じ返済ペースでも元金の減りが遅くなり、返済総額が増加します。逆に金利が下降すれば、支払う利息が減り、返済総額が減少する可能性があります。
例えば、借入残高が多い時期に金利が大きく変動すると、返済への影響は大きくなります。
具体的なシミュレーション例(変動金利の場合)
ここでは簡単な例として、残高100万円、返済期間10年、返済方式は定額返還方式、当初金利0.2%(変動金利)の場合を考えます。
- 金利が0.2%のまま推移した場合: 返済総額は約101万円となります。毎月の返済額は約8,400円程度です。
- 返済開始から金利が1.0%に上昇した場合: 金利が上昇すると毎月の返済額は見直されるか、返済期間が延びる場合があります。JASSOの変動金利では、大幅な返済額の増加を避けるため、原則として毎月の返済額は前回の125%以内にするなどの配慮がされていますが、返済総額は増加します。例えば、金利1.0%で計算し直すと、返済総額は約105万円程度となる可能性があります。
このように、金利の変動は返済総額に影響を及ぼします。変動金利の方は、市場金利の動向にある程度注意を払っておくことが大切です。
返済計画に金利タイプをどう考慮するか
- 固定金利の方: 金利が変わらないため、最初に立てた返済計画に大きな狂いが生じる可能性は低いです。計画通りに着実に返済を進めましょう。繰り上げ返済は支払う利息を確実に減らす有効な方法です。
- 変動金利の方: 金利上昇のリスクを念頭に置いておくことが重要です。
- 市場金利が上昇傾向にある場合は、早めに元金を減らすための繰り上げ返済を検討することも有効です。元金が減れば、仮に金利が上昇しても支払う利息の絶対額を抑えることができます。
- 金利上昇によって家計が圧迫される可能性に備え、少しゆとりを持った家計管理を心がけることも大切です。
どちらの金利タイプであっても、定期的にご自身の返済状況や残高を確認し、無理のない範囲で返済を進めていくことが重要です。
まとめ:金利タイプを理解して賢く返済しよう
有利子奨学金の金利タイプ(固定金利と変動金利)は、将来の返済額や返済総額に影響を与える大切な要素です。ご自身の奨学金がどちらの金利タイプであるかを確認し、それぞれの特徴やリスク、メリットを理解しておくことは、奨学金返済を計画的に進める上で役立ちます。
変動金利の方は金利上昇のリスクに、固定金利の方は市場金利低下による機会費用にある程度意識を向けることが望ましいでしょう。ご自身の家計状況や将来のライフプランに合わせて、返済方法や繰り上げ返済を検討するなど、賢く奨学金と向き合っていくことが、完済への近道となります。
もし、ご自身の金利タイプや返済について不安な点があれば、一人で抱え込まず、JASSOの相談窓口やファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談ください。