奨学金の返済方式の選び方と変更方法:定額返還方式と所得連動返還方式を徹底比較
奨学金の返済は、借り入れ期間よりも長く続く場合があります。毎月の返済額がどのように決まるのか、自分の収入やライフプランに合った返済方法を選べているのかは、完済までの道のりにおいて非常に重要なポイントです。
奨学金の返済方式にはいくつかの種類があり、選択した方式によって毎月の返済額や返済総額が変わってきます。特に、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には、主に「定額返還方式」と「所得連動返還方式」があります。これらの違いを理解し、自分に合った方式を選ぶことが、計画的な返済につながります。
この記事では、定額返還方式と所得連動返還方式の仕組み、それぞれのメリット・デメリット、そして返済方式の選び方や変更方法について詳しく解説します。
奨学金の主な返済方式とは
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金(特に第二種奨学金)には、主に以下の2つの返済方式があります。
- 定額返還方式: 貸与終了時に決定した月々の返済額が、原則として最後まで変わりません。
- 所得連動返還方式: 前年の所得(収入)に応じて、毎年の返済額が見直されます。
奨学金の貸与を受ける際に、どちらかの方式を選択しているはずです。まずはご自身の採用時決定通知や貸与額通知などで、現在どちらの方式になっているかをご確認いただくことをおすすめします。
定額返還方式の仕組みと特徴
定額返還方式は、最もシンプルで分かりやすい返済方式です。
仕組み
奨学金の貸与が終了した後、借りた総額、返済期間、金利(有利子奨学金の場合)に基づいて、毎月の返済額が計算され決定します。一度決定した月々の返済額は、原則として返済期間が終了するまで一定です。
例えば、総額300万円の奨学金を借り、返済期間20年、金利0.1%(有利子)の場合、月々の返済額は約12,600円(概算)となります。この金額が20年間(240ヶ月)続くことになります。
メリット
- 返済計画が立てやすい: 毎月の返済額が一定なので、将来の家計を見通しやすく、他の支出や貯蓄などの計画が立てやすいというメリットがあります。
- 返済総額が確定しやすい: 金利が変動しない場合、返済総額が比較的早期に確定します。
デメリット
- 収入の変動に対応しにくい: 収入が減少した場合でも、毎月の返済額は変わりません。転職や病気、休職などで収入が大きく減ると、返済が家計の負担になる可能性があります。
所得連動返還方式の仕組みと特徴
所得連動返還方式は、比較的新しい方式で、返済額が収入に応じて変動します。2017年度以降に第二種奨学金の貸与が始まった方が主に選択できる方式です。
仕組み
前年の課税対象所得に応じて、その年の返済月額が計算されます。具体的には、「課税対象所得×〇〇%(一定の割合)÷12ヶ月」といった計算に基づき、月々の返済額が決まります。この「一定の割合」は所得に応じて段階的に設定されており、所得が高いほど返済率も高くなります。
収入が少ない期間は返済額も少なくなり、収入が増えれば返済額も増えます。ただし、年間返済額には上限(年間返済額の上限は、貸与を受けた奨学金の総額を15年で返還する場合の年額の概念に相当する額など)が設定されています。
返済期間の上限は、返済を始めた月から最長20年間と定められていますが、これはあくまで上限であり、所得に応じて返済が早く終わることもあります。返済総額は、貸与総額に金利を含んだ金額となります。
メリット
- 収入が少ない期間の負担が軽減される: 社会人になったばかりで収入が少ない時期や、育児休業、病気などで一時的に収入が減った場合でも、返済額が所得に応じて調整されるため、家計への負担を抑えることができます。
- 延滞のリスクを減らせる可能性: 収入に応じた無理のない返済額になるため、返済が滞るリスクを減らすことにつながります。
デメリット
- 返済額が変動して見通しにくい: 毎年の所得によって返済額が変わるため、将来の返済計画が立てにくいと感じることがあります。
- 返済期間が長期化する可能性: 収入が低い状態が続くと、月々の返済額が少額になるため、結果として返済期間が長期化する可能性があります。
- 総返済額が増える可能性: 返済期間が長くなると、有利子奨学金の場合は利息の支払い期間も長くなり、総返済額が増える可能性があります。
自分に合った返済方式を選ぶポイント
どちらの返済方式が自分に合っているかは、個人の状況や将来のライフプランによって異なります。以下のポイントを考慮して検討することをおすすめします。
- 現在の収入と将来の収入見込み:
- 現時点で収入が少なく、今後数年間も大幅な増加が見込めない場合は、所得連動返還方式の方が負担を抑えられるかもしれません。
- 安定した収入があり、今後も着実な収入増加が見込める場合は、定額返還方式で計画的に返済していく方が分かりやすいかもしれません。
- 家計管理のスタイル:
- 毎月決まった額を確実に返済したい、家計管理はシンプルにしたいという場合は、定額返還方式が向いているかもしれません。
- 収入に応じて柔軟に対応したい、多少返済額が変動しても問題ないという場合は、所得連動返還方式も選択肢になります。
- 早期完済への意向:
- 積極的に繰り上げ返済を行って早期完済を目指したい場合は、定額返還方式の方が月々の負担額が明確で、繰り上げ返済の計画も立てやすいかもしれません。所得連動返還方式でも繰り上げ返済は可能ですが、返済額が変動するためシミュレーションがやや複雑になる場合があります。
返済方式の変更は可能か?手続きについて
奨学金の返済が始まってからも、返済方式を変更できる場合があります。
日本学生支援機構(JASSO)の場合、定額返還方式から所得連動返還方式への変更は可能です。しかし、所得連動返還方式から定額返還方式への変更は原則としてできません(特別な事情がある場合を除く)。
変更を検討される場合は、JASSOのスカラネット・パーソナルから手続きを行うか、電話で問い合わせることが可能です。変更の際には、改めて審査が行われたり、変更後の返済額のシミュレーションを確認したりすることが重要です。手続き方法や詳細な条件については、日本学生支援機構のウェブサイトで最新の情報をご確認ください。
返済方式に関する注意点
- 延滞は避ける: どちらの方式を選んだとしても、返済が遅れる(延滞する)ことは避けてください。延滞すると遅延損害金が発生したり、個人信用情報機関に登録されて将来の借り入れなどに影響が出たりする可能性があります。
- 制度を理解する: 所得連動返還方式の場合、返済額が収入に連動するとはいえ、延滞にならないわけではありません。定められた期間内に決められた額を返済する必要があります。制度の仕組みをよく理解しておくことが大切です。
- 困ったら相談する: 病気や失業などで返済が困難になった場合は、そのままにせず、必ず日本学生支援機構に相談してください。減額返還制度や返還期限猶予制度など、返済を一時的に軽減したり待ってもらったりできる制度があります。
まとめ
奨学金の返済方式には、毎月定額を返済する「定額返還方式」と、前年の所得に応じて返済額が変わる「所得連動返還方式」があります。それぞれにメリットとデメリットがあり、ご自身の収入状況や将来のライフプラン、家計管理の考え方に応じて、どちらがより適しているかを慎重に検討することが大切です。
定額返還方式は計画が立てやすい一方、所得変動に弱い可能性があります。所得連動返還方式は収入減に強い一方、返済額が変動し、返済期間や総額が長期化する可能性があります。
もし現在定額返還方式で、収入が不安定である、あるいは今後収入が減る見込みがあるといった場合は、所得連動返還方式への変更を検討することも可能です。ただし、一度所得連動返還方式に変更すると、原則として定額返還方式に戻すことはできません。
ご自身の返済状況や、今後起こりうるライフイベント(結婚、出産、転職など)を考慮に入れ、最も無理なく返済を続けられる方法を選択してください。不明な点があれば、日本学生支援機構に問い合わせることをおすすめします。計画的に返済を進め、一日も早い完済を目指しましょう。